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短編集

第1章 トイレット

「トイレット」
地下一階の居酒屋の便所に入り、洋式便器に腰掛けた男の左上には、正方形の扉があった。
「なんだ、この扉?」
男は、下半身丸出しのまま、左手を扉に伸ばした。
銀色の取っ手がついている。
そっと、取っ手を握って引いてみる。
ガチャ…。
扉は手前に開く、片開き。
簡単に開いた。
男は
―配電盤が入っているのかな?
と思っていた。
しかし、そこには怪物がいた。
…なんと表現すべきか、暗闇の空間の一部に、スポットライトが当てられたように明るくなっている場所があり、そこに体育座りをしている怪物がいたのだ。
怪物は扉が開いたことに気付いて、男の方を見た。
怪物は、小柄な灰色の人形の体で、頭にギョロっとした大きな目玉が1個ついていた。

バタン!

男は慌てて扉を閉めた。

「…何あれ?」

鼓動が速くなる。

理解不能。

―なんで、今、俺にこんなことが起きるのか?

最悪なことに、男の腹はもう限界だった。
便意はもう抑えきれない程に押し寄せていた。
小腸から直腸に押し出された大便が、肛門から排出される直前だった。
冷や汗が出る。
逃げ出したい。
でも大便も出したい。
葛藤。

だか、次に起こることは予想できる。

コンコンコン…。

―ノックきたー!やっぱりきたー!

小さな扉をノックされた。
きっと、さっきの怪物がノックしているのだ。

冷や汗がどっと溢れ出す。ゴクッと唾を飲み込む。

自分の心臓の音が飛び出しそうだ。
ついでにうんこも飛び出しそうだ。

―ああ!もう!いやーっ!

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