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短編集

第7章 『飛行願望』

カプセルの中身は、空を飛べる薬。

地球上では、自転による遠心力、重力、空気との摩擦、気圧等、様々な要素が障害となって、人間は空を飛べない。

でも、その障害のおかげで、人間は、人間として生きていける。

鳥が空を飛べるのは、その障害を、自分達に有効利用しているからだ。

風車が回るのも、その障害を有効利用しているからだ。

だが、人間は、その障害を有効利用しても、生身のまま、道具を使用せずに自由に空を飛ぶことはできない。

だから、人間が生身のまま、空を飛ぼうと思うなら、その障害を取り除かなければならない。

しかし、障害を取り除けば、そこは人間が飛びたい空じゃない。

寂しい虚無空間。


風を感じられない空なんて、飛ぶ意味があるかい?

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