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短編集

第7章 『飛行願望』

ふっと、少年は風車から飛び降りる。

落下。

重たい頭部が地面に向いて、まっ逆さまに、およそ50メートルの高さから落下する。

腰のあたりがこそばゆくなる。

この薬がまだなかったとき、高いところから地面を見て、飛び降りるのを想像したときの、感触。

全身が痺れる。

悪くない。

このままぐしゃぐしゃに潰れても。

脳や内臓を撒き散らして、ぐしゃぐしゃに。

そして動物や蟲に、食らわれても。

ありがちな言葉でいうなら、それが自然だ。

自然に還るだけだ。

俺が違う形になるだけだ。

それも人間という枠組みからの自由の一つだ。

年をとって、チューブや電極を身体に繋がれ、生き長らえるよりもよほどマシだ。

満月が夜空に見えた。

「ああ、いい夜だ…」

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