短編集
第8章 『探偵日和~今時な依頼~』
「探偵日和~今時な依頼~」
眼球を抜いて冷水に浸していたら、ドアチャイムが鳴って、客が入ってきた。
「嫁さんが家出したんだ!探してくれ!」
声がした方に向くが姿が見えない。
「あれ?お客さん、どちらに?」
「ここにおるだろ!よく見んかい!」
「あっ、こりゃ失礼…目を入れてませんでした」
氷水の入ったボールから眼球を取り出して、ぴっぴっと水気を切って目玉を嵌める。
ポコッ、ポコッと。
「ああ~きっく~!疲れ目にはやっぱ氷水だよぅ。ハーブも買ってこようかな」
「何言ってんだ!嫁さん探してくれよ!」
「おっとと、今度は客を忘れてたよ」
声がした方を見るがやっぱり姿が見えない。
「あれ?どこだい?」
「ここだ!ここ!」
ん~っと、よく見ると、ああ、いた。
蚤のノミ平だ。
「ノミ平さんじゃないですか?いなくなった奥さんはフネさんですか?フネさんなら、イササカせんせのところに…」
「うちのはフネじゃない!カーだよ!車の方だ!サザエさんやってんじゃないよ!」
「蚤のくせにカーだってさ…ぷぷっ!笑っちまうね!…って痛い!痒い!ごめんって!刺さないで、ノミ平さん!奥さん探すから!」
「わかりゃいいんだよ」
ぴょんぴょん。