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第2章 最後の柿

「最後の柿」
通勤途中の坂道に、歩道に被さるように柿の木の枝が張り出している。
季節は秋の終わり。
柿の実がなっている。
たわわとなっている。

男は柿が大好物だった。
会社への往復で、この柿の木の下を通るときが至福のときだった。
「いい色になってきたなぁ」
柿の木の下で立ち止まり、男は柿を見上げる。
数十個の柿。
大小、色ツヤ、形も様々だが時期的にも収穫どきは近づいていた。

「はあ、うまそうだなぁ…」

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