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短編集

第9章 「マンホール」

もちろん助けを呼んでみた。
でも、誰も来ない。
そうしたものである。

なぜ落ちたか?
そんなの理由なんてない。
強いて言うならボーっと歩いていたからしかない。
俺の馬鹿。

まあ、相対性理論について考察していたわけではなく、枯れ葉に哀愁を感じて詩作に耽っていたわけでもない。
仕事や家庭の悩みなんてのも関係ない。
ただボーっとしていたのだ。
俺の馬鹿。

いや、しかし。
マンホールの蓋を開けたままにしていたのはどうかと思う。
開けるにしても、落ちないような対策をしておくべきじゃないか。
マンホールの蓋を開けたままにしていた者の刑責や如何。
…そんなこと今言っててもしかたないじゃないか、俺の馬鹿。

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