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短編集

第9章 「マンホール」

少し息をついてから、俺とゴスロリは顔を見合わせた。

「もう一度やるか?」

「うーん、さっきやった感じだと、私の力じゃ上まであがれないと思った。」

「そうだな…難しいかもな。でも君が踏み台になるのは無理だろ?」

「そうなのよ。たぶん潰れちゃうし」

「他に方法はないかな?」

「う~ん、思い付かない」

「だよなぁ、誰かに気付いてもらうしかないか。やっぱり」


「うん…」


俺達は、これまで、簡単に外へ出られるだろう、と心のどこかで思っていた。

しかし実際はかなり厳しい状態に置かれていることに気付き、落ち込んだ。


―どうにかならないのか。

二人とも焦っていた。


そして、俺とゴスロリはどちらともなく二人で上を見上げた。


―……?



―……。



―なんだ、あれは?




マンホールの穴を巨大な目玉がのぞき込んでいた。


俺とゴスロリを見ていた。

観察しているかのようだった。


俺とゴスロリは微動だにできなかった。

鳥肌が立つ。

息が詰まる。


俺は唾をゴクリと飲む。

ゴスロリは、「きゃあーーーーっ!」と悲鳴を上げたあと、気を失って俺にもたれてきた。

俺も気を失ってしまいたかった。

巨大な目が俺を見ている。

瞬きをした。

こんなとき、俺はどうするんだ?

どうすればいいんだ?

わからないよ。

俺の馬鹿…。





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