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短編集

第2章 最後の柿

しかしよい方法はないものか。

そう考えながら柿の木の下を通ると、なんと柿をカラスがつついているではないか。

カラスは柿に近付き、くちばしで柿の果肉を旨そうについばんでいる。

「コノヤロー!」

男は怒って石を拾ってカラスに投げつけた。
カラスには当たらなかったが、カラスはぎーぎーと文句を言いながら飛び立っていった。

つつかれた柿は、無惨にも穴が開いている。
もう、元には戻らない。

―これは、一刻の猶予もない。他の柿までやられてしまう。やはり夜中に盗むしかない…。

男は考え抜いて朝の出勤
時に盗むべき柿に順位をつけた。
一番熟れた柿から順次、毎日1個盗んでいく。
そうすれば、持ち主も盗まれていることにしばらくの間は気づかないはずだ。

男は目星をつけた柿をじっくり眺め
―今夜、必ず。
と呟いた。


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