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……どうしてこうなった?

第12章 橘彰人の変化

気品のある顔立ちにどこか妖艶さを漂わせるその執事に橘は思わず見とれてしまう。

「ありがとう茅野。下げるのは自分でするからあとは入ってこなくて結構よ」

「かしこまりました」

茅野と呼ばれた執事は頭を下げ、そのまま出て行く。

「ごめんなさいね、彰人君。こんな仰々しくお茶なんて淹れてきて……」

「い、いやっ……ありがとう」

慣れた手つきで陸奥はお茶をカップに注ぐ。

嗅いだことがない芳醇な茶葉の香りに鼻腔をくすぐられ、橘はようやく落ち着いた気分を取り戻す。

「いい香りだね」

「気に入ってくれた? 私が一番好きな茶葉なの」

陸奥は難しい横文字を並べた品種名を述べたが橘の耳では捉えきれられるものではなかった。

「ふぅん、そうなんだ」と曖昧に相槌を打ってカップに口をつけた。

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