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……どうしてこうなった?

第26章 自殺

「ねえ、あなた……私を……抱いて……」

「あなたじゃねぇ……俺は橘彰人だ」

橘はようやく名乗って、ふわっとリョウを抱き締めた。

リョウの身体が小刻みに震えていることを、橘は抱き締めてはじめて知った。

「橘くんの身体、温かいね……」

抱き締められたリョウは次第に身体の震えが消えていった。

「俺も、穢れた人間だ……だけど死ななくてもいいんじゃないか、お互い」

「橘君……ありがとう……」

どこか噛み合ってないような会話だが、二人の心は噛み合っていた。

ただなにも言わず静かに抱き合って、時間が過ぎていくのを感じていた。

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