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キレーな顔した狼さん。

第15章 12匹目


「やっぱり、汐里さんっ!」

何故か嬉しそうに笑っている人物…

「瑠花…」

「汐里さん、こんな所で何を…?」

キョトンと首を傾げながら、
一歩一歩階段を下りてくる瑠花。

「い、いや…」

罰が悪く、瑠花の顔が見れない俺は
瑠花に反して一歩後退した…

…階段だということも忘れて。

─ガクンッ

「…え?」

「汐里さんっ!」

後退した瞬間、グラリと揺れる視界。

そして…慌てた様子の瑠花の顔が見えた。

これは…ヤバイ…─

まるでスローモーションの様にゆっくりと落ちる身体。

俺はそんな中、やけに冷静にこんなことを思った。

─ダンッ

ってぇ…

鈍い痛みが身体中に走る…

と、同時に…唇に感じる柔らかい感触と温もり。

こ、れは…

俺は大きく目を見開く。

目の前には瑠花の顔。

瑠花も俺に負けじと、大きな目を
更に大きく見開いていた。

…キス…してる?

─バッ

ハッと我に帰った俺は、上乗り状態の瑠花を引き離す。

ブワァッ

その瞬間、瑠花の顔は真っ赤に染まる。

「ごっ、ごめんなさいっ!
汐里さんが落ちそうでっ…だから私が支えようとしてっ……それでっそれで…っ」

パニックになりながらも、涙目で話す瑠花の顔は、必死そのもので。

そんな瑠花を見て、俺もだんだんと
状況を把握する。

…やってしまった……

漠然と思った。

瑠花が焦れば焦るほど、
俺はどんどん冷めてくる。

どー…しよう…

瑠花の話からして、瑠花は悪くない。

ただ純粋に、俺を助けよとしただけなんだから。

そうだ…
誰も………悪くない。

「瑠花…落ち着け。」

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