
天使で悪魔なセラピスト
第3章 最初の施術
「い、やあ、…!」
絞るようにか細く、ユナはとうとう拒絶を口にした。
すると。
蓮はすっと触れるのをやめて、ソファに横たえていたユナの身体を静かに抱き起こしてくれた。
「よくできました。…ユナちゃん」
「えっ。…?」
泣きそうに顔を顰め早い息をしながら尋ねたユナの頭を、蓮はよしよしと撫でた。
「大丈夫。キミの男性恐怖症はすぐに完治できるよ。」
え…
そう言って立ち上がり、こちらを振り返った蓮は、さっきあんな甘い施しをしてきたとは思えない程、凛として、「医師」の顔に戻っていた。
ユナは驚きと戸惑いを隠せないまま、まだ少し荒い呼吸をしながら蓮を見上げていたけれど。
「家まで送って行ってあげる。さっきの変なオヤジが待ち伏せてたらいけないからね。」
そう言って蓮はまた涼しい笑顔を浮かべた。
