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第10章 フィクサー

それからあっという間に1年がたった。

皆志帆のことを忘れかけていた。その間にも新しい娘が入店してきたりしていた。
開店準備をしていたとき


「こんばんはぁ~!
皆様お久しぶりです~、志帆でございま-す!」

凄い弾んだ声が店中に響きわたる。

ビックリ!
クルクルの内巻きカールにセットした髪にグレーのフォックスファーを羽織り、 全て今シーズンものの、*オートクチュールで揃えて来た。そんなお金無いはずなのに。


「あら、貴女連絡も無しに心配してたのよ、どうしたの?」


少々呆れ果てた感じでママがカウンターから出て来た。

不快な笑みを出しながらママを見て

「ママ~、私挨拶しに来たの。」


「お詫びかしら?
お詫びならもう良くてよ、お給料渡して無いから今お渡しするわよ。」


「お給料なんかいらないわ。お詫びにして、今日はお給料貰いに来た訳じゃないの。
お店出すの、ここよりもっとゴージャスなお店よ。」

相変わらず嫌な笑みを出してクスクス笑っているのを弾き飛ばすかのように

「おめでとう、凄いわね!何処にお出しするの?挨拶しに行かないとね。」

平然な顔でママは接していた。

嫌な予感がした。
そして的中した。



*オートクチュール=パリコレクション等に出てくる一点物の服。

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