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あなたが消えない

第18章 貫く、この気持ち

年明け早々に、和男が最近やたらと本社に出向いては帰りが遅いので、興味はないがある時に聞いてみた。

「どうやら、俺は次の人事異動で県外に転勤になるみたいなんだ」

「えぇ?!そうなの?」

意外な言葉に驚いた。

「俺も会社では、逆らえない身だからな。当然そうなりゃ、従うまでだけど。そうするとなると、パート勤めしてる翼をどうしたものか~と思っててさぁ」

確かに、やっと作業にも慣れてきて、みんなと仲良くなれたのに、短い期間で辞めたくない。

「お茶してるくらいの仲だもんなぁ」

和男は、改まって言う。

「どうする?そうなったら、俺と一緒に来るか?」

視線をそらした先に見えたのは、翔の最後に見た優しい笑顔だった。

「…行かない」

確かに仕事先を辞めなくてはいけないという問題もある。

それも重大は重大だろうが。

その前に何よりも、私はこの場所に居なくてはいけないのだ。

翔が、会いに来てくれるかも知れないから。

翔が、まだこの街のどこかに居て。

翔と、偶然にも再会するかも知れないから。

翔を、いつでも見かけられる場所に居たいの。

翔、私はあなたから離れたりしない。

「ごめん、私はここに残るわ」

「だよなぁ、翼はたぶんそういう女だと思ってたから、転勤になったら俺一人で行くわ」

「うん。やっぱり今のパート先、辞めなくないし」

「せっかく入った所だもんな」

「そうそう」

翔が、いつでもこのアパートに来てもいいように、私は201号室に残るから。

私がここに残る事こそが。

私の翔への愛を貫く気持ち。

だから、いつかまた会えるよね…翔?

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