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あなたが消えない

第8章 秘密の時間

また見つめ合って、軽くキス。

かと、思いきやすぐさま濃厚なキスになる。

腰に手を回されてグッと密着して。

首に手を回して、離れられなくする。

口唇が一瞬離れても、交わり合ったお互いの唾液が糸をはる。

濡れて光る、お互いの口唇。

それを確認しては、また更に舐めるように深く口付けていく。

キモチいい…。

キモチ良すぎて、溶けてしまいそう。

…死んでもいい。

そう思えるくらいの男が、結婚してしまった今更現れてしまうなんて、神様はなんて意地悪なのだろう。

「入れたい…いい?」

いちいち言葉で確認するから、それだけで感じる。

翔はスッと私の腕輪から抜けて、下へと落ちた。

もう、どうなってもいい。

何をされてもいい。

翔には何でも話せた。

過去の事も、今の事も、この先自分がどうして行きたいのかも。

印象の悪いだけのあなたに、私は信用しきっていた。

身体だけじゃない。

ほんの些細な悩みだって、あなたと私の結ぶ口実にしたくて、アパートの階段を降りて、101号室の扉を叩く。

私の部屋に来て欲しいだなんて催促はしない。

そんな事で、悩む時間すら勿体ないから。

「いらっしゃい、翼…」

私はその胸に飛び込む。

この人の、愛する人と新しい家族が戻ってくるまでに、私は彼の全てを自分のモノにする事に必死で、正直焦っていた。

好き…愛してる、翔…。

何も言ってくれないけれど、翔はギュッと私を包み込み、抱き締めてくれた。

言わせて認めさせたい、翔に。

黙って抱き締めて、キスを深く激しくして、さまよう指先で直接感じ合う。

キスする意味…指先が身体を辿る意味を私は知りたいの…翔の声で…。

キスの音、荒くなる息使い、時々その隙間から、翔の声が漏れる。

「…あぁ…もう…我慢できねぇ…」

身体の底から出る翔の言葉に、私は頬を染める。

本当は愛してると言ってもらいたい。

「…んんぅっ…翔…好きよ…」

入れたタイミングで、やっぱり私から言ってしまった。

言わせたいのに。

「翔…愛してる…私はあなたを愛してるの…」

何度も何度も、振り絞るように伝える。

なのに、あなたは何も言ってくれない。

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