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あなたが消えない

第8章 秘密の時間

お願い…言って?

後ろに視線を向けると、翔は意外にも物凄く感じている様子で、虚ろな目付きで視点が定まっていなかった。

ただ、夢中で動いているように思えた。

好きと言わせたい一心で、私は必死で動く。

翔、好きって言って。

お願いだから。

でも結局、翔の無心の激しい動きに。

私がまた、翔を好きになった。

熱い時間を過ごして、私は髪を束ねて、玄関先で座っていると後ろから抱き締められた。

「翔?」

「明日は帰りが遅くなる。だから、俺が帰る頃には、翼の旦那も家に居るだろうから、どうする?昼にエッチする?」

「年末だからね。みんな忙しいから。いいよ、しない」

「寂しくない?」

「大丈夫。だって、翔はいつも私の下の階に居てくれるんだもの」

「…」

少しの間の意味さえも、私は今の生活が幸せ過ぎて気付きもしなかった。

「翔、私もね実は働きに行こうかと思ってて」

「えっ、どこに?」

「あの近くのスーパー、求人出てたから。短時間なんだけどね」

「いつから?」

翔は私に、問い掛けを繰り返す。

和男にすらも、こんな話していないのに。

いや、和男は私に聞かないからだ。

「面接は来週の26日なの」

「暮れの忙しい時期にか、珍しいな」

「面接して、採用されたらまた教えるね」

「分かった」

私は立ち上がると、もう一度キスをする。

「ご馳走さまでした」

翔の笑顔に私も、

「どういたしまして」

振り返って何を言うかと思えば、

「旦那とエッチしたら許さねぇからな」

「しないよ、翔としかしないってば」

子どもみたいにムスッとして言うから、おかしくって。

「すぐ文句付けにいってやるからな」

「うん」

翔はやっぱり自分のモノにしたいんだね、私を。

「翔、愛してる」

「…あぁ」

抱き締めてくれても、それでも私の問い掛けには、軽々しく愛してると絶対に答えてはくれなかった。

ただ、じっと私を見つめていた。

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