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あなたが消えない

第13章 あなたの全てが欲しいのに

翌日の昼間に、翔にアルバイトの初出勤日を3日後と告げた。

「無事に決まって、よかったね」

「うん」

今日は101号室の翔の玄関の狭い廊下で、二人横になっていた。

「緊張する?」

「ちょっとだけ」

「翼なら大丈夫だよ。俺と違って愛想良いから」

私は翔の腕に頬ずりをして、

「翔が愛想無さ過ぎるんだよ」

「無いよ、俺は翼以外はどうでもいいからね」

「嘘?」

「なんなら、今夜もする?」

翔は起き上がり、脱ぎ捨てた作業服を着る。

「そう言えば、何だか凄く玄関キレイだけど」

「あぁ、まぁ。片付けたから」

片付けたって、むしろ余計なモノが無くなっているような気がする。

…そっか。

もうすぐ、奥さんと子どもが戻って来るからか。

「人の家の中を、そんなに見たらダメだよ」

翔は私の視界を塞ぐように濃厚なキスをした。

「…んぅぅ…」

やっぱり翔のキス、好き。

また欲しくなる。

「今夜資源ゴミ、また一緒に捨てに行かないか?」

口唇が離れた瞬間、そんな事を言うから私は思わず笑った。

「何を言うかと思えば」

「笑い過ぎ」

ベルトをガチャガチャと締めて、

「ほら、早く着替えて。そろそろ行かなきゃ」

私は慌てて着替えて、靴を履く。

一緒にコッソリと、玄関を出る。

「じゃあ、また今夜ね。旦那が早く帰って来ても、絶対一緒に行こうな」

「うん」

私は手を振って、階段を上りながら翔を見つめていた。

翔も車に乗り込み、徐行しながら私に手を振って立ち去った。

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