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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

―そなた、予の側近く仕えぬか。
 あのときの台詞は、そのような意味合いだったのだ。小文が切支丹であることを知り、秀吉が思いとどまったことは明らかだが、ご禁制である切支丹だと判っていながら、何故、小文を見逃したのか―。
 あれからも小文はいつもロザリオを身につけている。たとえ、誰に止められようと、でうす様の御(み)教えを棄てるつもりは毛頭ない。徳川幕府も切支丹を固く禁じ、切支丹の厳しい取り締まりがなされている。囚われ詮議されてもなお信仰を棄てぬ切支丹は処刑され、各地で多くの殉教者が出ていると聞いていた。
 京の都からも幾つかあった天主堂がことごとく打ち壊され、姿を消した。異国の伴天連も日本を追い払われた。

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