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心から

第1章 君にとっての僕

そんなことを一人悶々と考えていると、
突然視界が一人の男に独占されてしまった。

その男の手には
ブックカバーのついた文庫本が握られている。

「またストーカー?
嫌われるよ。
ってか、嫌われてるのか」

男の名は和己(カズミ)。僕はナゴミと呼んでいる。

「うるせぇ。
ストーカーじゃねぇ」

僕はナゴミにそっぽを向くと
ナゴミは「どうかな」と呟き、
文庫本を黙々と読み始める。

廊下側の窓からは
数十人の女子が
顔を赤らめながら覗き込み
ヒソヒソと話している。

会話のところどころに
『和己様』というワードが
ちらついている。

「今日もモテモテですね、ナゴミ様」

嫌味っぽくからかうと
ナゴミは
「もう慣れたから」と
すまし顔をかました。

「ってか、その呼び方やめてよ。
ゴミみたいで嫌なんだよね」

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