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鳴り響く踏み切りの向こうの世界

第2章 通りゃんせ

『早まるな!君には素晴らしい未来がある!いいか?良く聞け!世の中まだまだ捨てた物じゃないぞ!うん。君には音楽の才能がある。間違いない!どうだ!うちの事務所に来ないか?君の歌なら東京ドームも‥‥』

振り返ると藤城だった。藤城秀一。元ギタリスト。

『で‥‥?』

『入らないなぁ。大赤字食らって借金まみれ。残念なことに魂さえ売れない。なにせ俺すら観に行かない。あっ花束位送るぜ。あの花のように安っぽい花束』

藤城はニヤリと笑いながら例の“一束の人生”に視線をやる。行き交う人は何事かと視線を投げる。これじゃあ‥まるで俺は自殺志願者だ。

『いつまで話してるんだ。ビックリさせるなよ。 全く‥何の用だよ』

『いや…玄関の前で待っていたら…違うのか?てっきり曲創りに行き詰まって…違うのか?いや~良かった。良かった。本当に良かった』

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