鳴り響く踏み切りの向こうの世界
第2章 通りゃんせ
『全く‥来るなら来るで連絡ぐらいしろよ』
『いや~電話して断られたら…傷つくじゃん。だから断われない状況を作る。常套手段。それにしてもこのマンションはエレベーターを作る計画はないのかね。』
四階まで上がる階段の途中でいつもの台詞。
部屋に入ると藤城は俺にビールを袋ごと渡し、自分はさっさと壁に掛かったフォークギターをいじる。藤城はあまり酒を飲まない。
『あい変わらず…微妙にチューニングずれてるな。まっ、お前には関係ないか』
藤城はチューニングメーターを視線で探す。こいつは決して耳では合わせない。几帳面な性格だろう。
『で、大学はどうだ?』
ピーン‥
『ん?あい変わらず…退屈だよ。』
ピーン‥
『よし!』
豪快にカッティングを始め止める。
俺は藤城の細く長い指先を見る。弦楽器に向いている大きな掌。何度も羨ましいと思った。
踏切の警笛が聞こえる。藤城はリズムを合わせてギターを叩きやがて指先で弾き始める。独特な音の世界が部屋に充満する。藤城は歌えとばかりに顎を出す。
鳴り響く♪踏切の向こう♪‥‥‥‥♪
言葉に詰まりハミングする。藤城の手ぐせを知っている俺。藤城もまた俺の声の音域と癖そして好みのコードを知り尽くしている。お互いの手探りの中‥疑心暗鬼の中、不安定な楽曲の世界が浮き彫りになる。
なんて‥悲しい楽曲だろう。
転調する。予定通りさ。しかし藤城はギターを止めた。
『しかし‥まるで(天国の階段)のパクりだなぁ‥駄目だ。まるで才能がない。全くない!』
『いや~電話して断られたら…傷つくじゃん。だから断われない状況を作る。常套手段。それにしてもこのマンションはエレベーターを作る計画はないのかね。』
四階まで上がる階段の途中でいつもの台詞。
部屋に入ると藤城は俺にビールを袋ごと渡し、自分はさっさと壁に掛かったフォークギターをいじる。藤城はあまり酒を飲まない。
『あい変わらず…微妙にチューニングずれてるな。まっ、お前には関係ないか』
藤城はチューニングメーターを視線で探す。こいつは決して耳では合わせない。几帳面な性格だろう。
『で、大学はどうだ?』
ピーン‥
『ん?あい変わらず…退屈だよ。』
ピーン‥
『よし!』
豪快にカッティングを始め止める。
俺は藤城の細く長い指先を見る。弦楽器に向いている大きな掌。何度も羨ましいと思った。
踏切の警笛が聞こえる。藤城はリズムを合わせてギターを叩きやがて指先で弾き始める。独特な音の世界が部屋に充満する。藤城は歌えとばかりに顎を出す。
鳴り響く♪踏切の向こう♪‥‥‥‥♪
言葉に詰まりハミングする。藤城の手ぐせを知っている俺。藤城もまた俺の声の音域と癖そして好みのコードを知り尽くしている。お互いの手探りの中‥疑心暗鬼の中、不安定な楽曲の世界が浮き彫りになる。
なんて‥悲しい楽曲だろう。
転調する。予定通りさ。しかし藤城はギターを止めた。
『しかし‥まるで(天国の階段)のパクりだなぁ‥駄目だ。まるで才能がない。全くない!』