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鳴り響く踏み切りの向こうの世界

第2章 通りゃんせ

『そんなに可笑しいか?』

クックッ‥

『お前さ‥なんか勘違いしてないか?心も身体も美しい女性を想像してないか?あのさ‥純粋な歌を創る連中が純粋か?逆だよ。逆。あいつらは対極から物事を見ているだけ。だからこそ異常なまでのリアリティーが存在する。まさに逆も真なり。それもまた真実。いい加減にその癖を直せよ。お前は何処かで素敵なラブストーリーを描く女流作家は美しいと思っている。だ、か、らお前の歌はいつまで経っても心に響かないんだよ。いい加減に大人になれよ』

痛いところ突かれた。だが‥余計な話に余計なお世話だ。関係ない。

『確かに‥俺は被害者を知らない』

曲云々は認めない。藤城はまだ長いまま煙草を消した。

『だから‥被害者じゃないぜ。厳密には加害者だろう。迷惑してるのは鉄道会社であり、足止めくらった乗客だろう。例えば直接的ではないにしろ人生変わっちまった奴は確実にいるぜ』

『もういい。キリがない』

それでも藤城は絡む。

『そういう台詞はキリを見てから言えよ。但し自分で決めたキリじゃない。自分が認めた人間のキリさ。それを越えればその人間を越せる‥ただ面白いな。確かに何故に女は駅から飛び込まずに踏切を選択したのか?考えた事はないなぁ』

俺も煙草を消してそして立ち上がった。

『何処へ行くんだ。ツマミなら入っているぜ。焼き鳥にサラダに‥』

『踏切さ。付き合えよ。お前のキリを見せてみろ。』

藤城はニヤリと笑う。

『光栄だな。男二人で退屈だ。付き合うぜ』

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