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鳴り響く踏み切りの向こうの世界

第2章 通りゃんせ

『で、もちろん俺がね‥あの踏切がどうしたんだ?何かあったのか?』

藤城はフォークギターをスタンドに丁寧に立て掛けた。
俺は煙草に火を付けた。

『自殺があった。若い女が死んだんだ。白昼堂々。群衆の中で‥何故か少し気になった』

『気になった‥って?』

藤城ソファーにふんぞり返る。

『上手く言えないけど‥何故踏切なんだろう。駅から飛び込んだ方がスムーズと言うか‥やっぱり上手く言えないけど‥』

吐き出した煙が無言な時間をゆっくりと数える。ようやく消えかけた頃藤城は口火を切る。

『全く‥上手く言えよ。表現者になりたいんだろう?‥うーん。まぁ‥確かに‥つまりはあれだろう。動いている扇風機に指を突っ込むような‥見るからに痛い。なんとなくだけど痛い』

‥なんとなく当たっている。

『ああ‥下手をすれば吹っ飛ばされる。やっぱり上手く言えないけど‥しかも‥あの踏切だぜ。』

『あのって‥なんか特殊な踏切だっけ?』

藤城の長い指に絡まった煙草を器用に回しながら薄い唇に運び、長らく愛用しているジッポライターで火を点ける。

カチッ

『通称通りゃんせ』

『通りゃんせ?』

藤城は笑った。

クックックッ‥

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