鳴り響く踏み切りの向こうの世界
第4章 犬婆さんの正体
『亡くなった…』
『そう。そりゃあ大騒ぎになって‥特にお祖母さんは可愛い娘と孫を一気に亡くした訳だから、お気の毒になんて簡単な言葉は許されなかった』
『旦那さんは?』
『お祖母さんの旦那もお母さんの旦那も交通事故で亡くなったみたい。全く…なんの因果かね。まさか…あんたら…呪われた一家なんて興味本位で調べてるんじゃないだろうね』
『下らない。冗談じゃない』
藤城は首をゆっくり振り、きっぱりと言った。
『なら、いいんだけど…さ』
『それで…通りゃんせとは?』
『二度とこんな悲劇を繰り返してはいけない、お祖母さんはあるときから踏み切りを監視するようになったの。住民は同情し、感謝した。だけど…お婆さんは余計な一言が多かったのよ。コラッ!男と女が一緒に歩くとは何事だ!‥とかね。だんだん鬱陶しくなって、一時、地元の人間は誰もあの踏み切りを通らなくなったわ。そして誰かが皮肉ったのよ。まるで、通りゃんせだってね』
『―――――――――』
『結局…地元の有力者が、太陽鉄道に掛け合って…あの地下通路が完成した。以来、お婆さんは姿を見せなくなった』
『そのお婆さんは、今?』
『まだ、生きてるわよ。犬を乳母車に乗せて…』
『犬婆さん!』
女マスターは意外にもニッコリと笑った。
『そう、あの坊やの変わりに犬を乗せてね。確かあの柴犬は二代目じゃなかったかな。犬も心得てるもねなのね。賢いわ』
カランカラン…
中年男が入ってきた。
『あっ!たーさん、いらっしゃい!』
たーさんはジロリと俺と藤城を睨んだ。
『あれっ?珍しい。先客かい』
『ありがとうございます。大丈夫ですよ』
と藤城。
『そう。少ししゃべり過ぎたかな…あんまり話さないでね。お祖母さんに悪気はなかったんだから…ね!』
『そう。そりゃあ大騒ぎになって‥特にお祖母さんは可愛い娘と孫を一気に亡くした訳だから、お気の毒になんて簡単な言葉は許されなかった』
『旦那さんは?』
『お祖母さんの旦那もお母さんの旦那も交通事故で亡くなったみたい。全く…なんの因果かね。まさか…あんたら…呪われた一家なんて興味本位で調べてるんじゃないだろうね』
『下らない。冗談じゃない』
藤城は首をゆっくり振り、きっぱりと言った。
『なら、いいんだけど…さ』
『それで…通りゃんせとは?』
『二度とこんな悲劇を繰り返してはいけない、お祖母さんはあるときから踏み切りを監視するようになったの。住民は同情し、感謝した。だけど…お婆さんは余計な一言が多かったのよ。コラッ!男と女が一緒に歩くとは何事だ!‥とかね。だんだん鬱陶しくなって、一時、地元の人間は誰もあの踏み切りを通らなくなったわ。そして誰かが皮肉ったのよ。まるで、通りゃんせだってね』
『―――――――――』
『結局…地元の有力者が、太陽鉄道に掛け合って…あの地下通路が完成した。以来、お婆さんは姿を見せなくなった』
『そのお婆さんは、今?』
『まだ、生きてるわよ。犬を乳母車に乗せて…』
『犬婆さん!』
女マスターは意外にもニッコリと笑った。
『そう、あの坊やの変わりに犬を乗せてね。確かあの柴犬は二代目じゃなかったかな。犬も心得てるもねなのね。賢いわ』
カランカラン…
中年男が入ってきた。
『あっ!たーさん、いらっしゃい!』
たーさんはジロリと俺と藤城を睨んだ。
『あれっ?珍しい。先客かい』
『ありがとうございます。大丈夫ですよ』
と藤城。
『そう。少ししゃべり過ぎたかな…あんまり話さないでね。お祖母さんに悪気はなかったんだから…ね!』