鳴り響く踏み切りの向こうの世界
第4章 犬婆さんの正体
『あぁ…あの、通りゃんせね』
‥やはり地元の人間には通りゃんせで通っている。
『なんで、また?』
『いやぁ…大学でこの辺りの事を調べているんですよ。あっ…座りますか?』
藤城は席を奥に移動して、椅子を引いた。女マスターは、キョロキョロ回りを見渡し、椅子に座った。
『もう‥二十年も前かしら…踏み切り事故があったのよ。小さい子供がね…踏み切りを潜って列車に跳ねられたの。可哀想に…まだ幼稚園に通いはじめた頃だった。しかも母親の目の前で…本当に…痛ましい事故だった』
女マスターの目に僅かに涙が浮かんだ。昔ながらの喫茶店。そして昔ながらの情に厚い人なんだろう。
『――――――』
俺と藤城は黙って聞いていた。
『それで…お母さんは少しおかしくなってしまった。仕方ないわよね。誰だって目の前で…さ。やがて亡くなったわ』
『亡くなった?』
藤城は聞くと、女マスターはため息のようにゆっくりと頷いた。
『自殺したのよ。自宅で首を吊ってね』
それで…お化けでも出るのか?
分かっている。
俺は不謹慎な男さ
‥やはり地元の人間には通りゃんせで通っている。
『なんで、また?』
『いやぁ…大学でこの辺りの事を調べているんですよ。あっ…座りますか?』
藤城は席を奥に移動して、椅子を引いた。女マスターは、キョロキョロ回りを見渡し、椅子に座った。
『もう‥二十年も前かしら…踏み切り事故があったのよ。小さい子供がね…踏み切りを潜って列車に跳ねられたの。可哀想に…まだ幼稚園に通いはじめた頃だった。しかも母親の目の前で…本当に…痛ましい事故だった』
女マスターの目に僅かに涙が浮かんだ。昔ながらの喫茶店。そして昔ながらの情に厚い人なんだろう。
『――――――』
俺と藤城は黙って聞いていた。
『それで…お母さんは少しおかしくなってしまった。仕方ないわよね。誰だって目の前で…さ。やがて亡くなったわ』
『亡くなった?』
藤城は聞くと、女マスターはため息のようにゆっくりと頷いた。
『自殺したのよ。自宅で首を吊ってね』
それで…お化けでも出るのか?
分かっている。
俺は不謹慎な男さ