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鳴り響く踏み切りの向こうの世界

第1章 一束の人生

違和感‥いや矛盾かしかし言う程ではないかもしれない
単純に考えたら…賠償金が安い。だから‥太陽鉄道に飛び込む。遺された家族に迷惑をかけたくない。

しかし…他人様には迷惑が掛かる。

なんか矛盾と言うか…可笑しな気がした。
いや…可笑しいだろう。

もっとも地元の人間なら電車イコール東埼線だ。たまたまだろう。踏み切り自殺なんて計画的ではない。発作的かも知れない。

俺の方が可笑しいのか?考え過ぎか?

俺は釈然としないまま休憩室を出て着替えて工場を出た。

家から工場まで自転車で二十分。
例の通りゃんせに差し掛かる。あの場所には一束の花が添えられていた、

なんだろう…交通事故だったりすると沢山の花束が飾られている。

しかし…たった一束…。顔も何も知らない彼女の人生ほんの少しだけ見た気がした。

たった一束の人生。孤独な人生だったのか。

(あの乳母車の婆さんかな‥。)

直感さ。多分間違いない。

やがて踏み切りが鳴る。遮断機が降りる。俺は慌てて走り出した。矢印は下り列車。急行列車だろうか?

俺は五十メートル先の電工掲示板を見る。視力だけは自信がある。


当駅通過


急行列車だ。

来るぞ!

聴こえる…

♪死ね!死ね!死ね!♪

作詞俺。作曲?

タイトル

『鳴り響く踏み切りの向こうの世界』

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