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無題

第4章 変化(前編)

歩いて雅樹の部屋に向かう途中で
携帯が鳴った。

さっきアドレス聞かれた水瀬の娘で、
合コンのお礼メールだった。

雅樹にもきているみたいなので
一斉送信だと思う。

女の子とメールするのは
失恋以来なので、
当たり障りの無い文面を
懸命に考えて歩いている内に
アパートに着いた。

部屋に入る頃に
ようやく送信して
顔をあげると、
雅樹がつまらなそうに
テレビの電源をいれているところだった。

「さっきの娘気に入ったのか?」

「メールきたから返しただけ」

「の割りに、結構真剣だったよな?」

何となく
険のある
投げやりな言い方が
引っ掛かる。

「そう言うわけでは無いよ」

雅樹は
ふぅん
とつまらなさそうに言うと
テレビに集中しだした。

何となく
ピリつく雰囲気を
誤魔化すように
何をするでもなく
携帯を触っていたら
返信が返ってきた。

マメな娘だなぁ
と思いながら
返信すると
またすぐに
返信くるので
返す。

思いの外
話が合うのに
感動しながら
メールに集中していると
雅樹から話しかけられた。

「何か楽しそうだけど、さっきの娘?」

「うん」

メールを打ちながら答えて、
返信を終えて
顔をあげると
不愉快そうな雅樹と
目があった。

スッ
と目を反らして
寝る準備を始める雅樹を
不思議そうに見ながらも
メールを続けた。

結局話が盛り上がってしまい
だいぶ遅い時間になって
水瀬の娘からの返信が止まった。

チラリ
とベットを見ると、
雅樹が郁也に背中を向けていたので、
寝たのだと判断して
郁也も
眠りについた。

何事も無く朝を迎えて
起き上がると
雅樹の姿が無く、
朝食のサンドイッチが机に置かれていた。

携帯に雅樹からのメールがあり、
用事があるので先に出る事と、
机のサンドイッチは食べていい事、
鍵は学校で返してくれればいい事
が簡潔に書いてあった。

昨夜
微妙な雰囲気で寝たから
起きてから微妙かな
と考えていたが、
何だかんだと面倒見がいい雅樹に
〈了解、サンドイッチありがとう〉
と返信しておく。

雅樹の他に
もう一件
水瀬の娘からメールがきていたのも
返しながら
サンドイッチを
頬張った。

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