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無題

第5章 変化(後編)

いつ来ても最低限の生活感しかない雅樹の部屋は

片付いていると言うよりは物悲しい印象の方が強く、
炊かれている香の匂いは
季節感が無く
時間が固まってしまったように感じた。


2ヶ月前
何度と来た時より寂しい印象を受けるのは

郁也自身の心情も変化しているからなのかもしれないと思った。



「コーヒーでいい?」

「あぁ、ありがとう」

運ばれてきたコーヒーを一口すすって呼吸を整える。

雅樹は指定席で
録画したドラマをぼんやりと眺めている。


「由美ちゃんからメール来た?」

「あぁ」

「行く?」

「…行く、予定」


意外な返答に思わず雅樹の顔を見たが、
体勢も変わること無く

ぼんやりとテレビ画面を眺めていた。


「何で?」

「何となく」


それっきりドラマが終わるまでお互いに無言になってしまった。

夏の夜は早くあっという間に暗くなってしまった。

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