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無題

第5章 変化(後編)

雅樹に続いて歩いている間
お互いに
一言も発すること無く、
雅樹の家に続く
細い一本道が
無駄に長く感じた。


桜は
2ヶ月の間に
すっかり散ってしまい、
夏になりきれない
生ぬるい風が
肌に馴染むように
郁也と雅樹の間を
通り過ぎていく。


季節の変わり目の色は
こんなにも
色褪せているものなのか

沈んだ気持ちに
拍車をかけていた。


何を
話せばいいのか
正直何も考えてはいなかった。


何とかなるだろう
と思える余裕も
郁也は持ち合わせていなかった。


ただ、
帰ろうとする雅樹の
背中を
見送ることが
できなかった
から
引き止めただけ。


雅樹のため息で
すでに
折れかけている自分の心の
女々しさに
エールを送り、
今以上の気まずさを
耐えれますように

小さく願掛けするしか
今の郁也にはできなかった。

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