無題
第1章 始まり(前編)
郁也がコーヒーを持ってく時には
雅樹は既に着替え終えて
ベッドの端
に座っていた。
いつも
ピシッ
とシワの無い服についた
シワが雅樹の心情
を表しているように思えて
つい
目を反らしてしまった。
「俺帰るよ」
「うん…」
気まずい雰囲気
にも耐えかねていたので
郁也は素直に頷いた。
緩慢な仕草で動く雅樹は
歩く度に
よろめいて
眉間に皺を寄せた。
何歩か歩いて
浅くため息をつく姿
を見てられなくなった。
「送るよ」
「いや、大丈夫」
そう言うそばから
転びそうになる雅樹を
郁也は
しっかりと受け止めた。
ちゃんと
男の骨格なのだが
細い腰が
儚げに見えた。
視線を泳がせて
表情の固まった雅樹を
ゆっくりと歩かせる。
外気は
ほんのり温かく
桜が散る様子は
美しい筈なのに
2人の間の空気だけは
真冬のように
冷たい気がした。
どうして
こうなってしまったんだろう?
過去に戻れるマシン
があれば
全力で止めるのに…
「明日迎えに来ようか?」
「何で?」
「しばらく辛いかなと思って…」
ゆっくりとしたペース
で歩きながら
郁也は控え目に
雅樹を見つめた。
感情の読み取れない視線
でしばらく郁也を見つめた後に
フッ
と小さく笑った。
「変な奴」
「え?」
「じゃあお願いしようかな」
「え!?」
「嫌ならいいけど」
「いや、迎え来るよッ」
そうこう言っているうちに
雅樹の住む
マンションに着いたので
元来た道を
とぼとぼ
と戻っていった。
雅樹は既に着替え終えて
ベッドの端
に座っていた。
いつも
ピシッ
とシワの無い服についた
シワが雅樹の心情
を表しているように思えて
つい
目を反らしてしまった。
「俺帰るよ」
「うん…」
気まずい雰囲気
にも耐えかねていたので
郁也は素直に頷いた。
緩慢な仕草で動く雅樹は
歩く度に
よろめいて
眉間に皺を寄せた。
何歩か歩いて
浅くため息をつく姿
を見てられなくなった。
「送るよ」
「いや、大丈夫」
そう言うそばから
転びそうになる雅樹を
郁也は
しっかりと受け止めた。
ちゃんと
男の骨格なのだが
細い腰が
儚げに見えた。
視線を泳がせて
表情の固まった雅樹を
ゆっくりと歩かせる。
外気は
ほんのり温かく
桜が散る様子は
美しい筈なのに
2人の間の空気だけは
真冬のように
冷たい気がした。
どうして
こうなってしまったんだろう?
過去に戻れるマシン
があれば
全力で止めるのに…
「明日迎えに来ようか?」
「何で?」
「しばらく辛いかなと思って…」
ゆっくりとしたペース
で歩きながら
郁也は控え目に
雅樹を見つめた。
感情の読み取れない視線
でしばらく郁也を見つめた後に
フッ
と小さく笑った。
「変な奴」
「え?」
「じゃあお願いしようかな」
「え!?」
「嫌ならいいけど」
「いや、迎え来るよッ」
そうこう言っているうちに
雅樹の住む
マンションに着いたので
元来た道を
とぼとぼ
と戻っていった。