スマイル ~*届3続編。気象・N*~
第18章 episode16~*暖かい*~
♪~
唯「!」
ペンと紙が擦れる音しか聞こえないところで、
突然鳴りだした携帯に思わず肩を揺らす。
聞き慣れている歌だけど、
携帯から久し振りに聞いた“虹”は、心を動かすのに充分すぎるものだった。
唯「もしもしっ…和くん…?」
和「唯……もしかして…泣いてる?」
だって……、寂しかった。
寒くて寒くて、仕方がなかった。
そんなときに、わかっているかのように絶妙なタイミングで、
滅多にしない嬉しいこと、するんだもん……。
和「仕事…終わらない?
帰って来ないから心配で…。
」
柔らかくて暖かくて…
優しく包み込むような、そんな声。
冷たく凍り付いた心を、
いとも簡単に溶かしていく……。
唯「和くん…会いたい、よっ……」
和「俺もだよ…。
だから、帰っておいで…?」
唯「うんっ…」
促されるように荷物をまとめ、戸締まりを確認して、
職員玄関の鍵を閉めたとき、後ろから眩しい光に照らされる。
唯「な、にっ…」
目を細めて光の方を見ると、
「ねっ、唯。
帰ろう…?」
その声は通話口だけでなく、反対側からも直に聞こえてきて。
唯「和、くんっ…!」
車から降りた和くんの方に走って、そのまま抱きついた。
そんな私に、和くんは背中に腕を回して、きつく抱き締めた。
和「本当、お疲れ様。」
和くんが私の顎をクイッと上げて、そのまま口付けた。
どうしよう…
暖かい…。
すごく、暖かい……。
あれだけ凍え死んでしまいそうだったのに…
こんな季節で、夜中に外に出たら寒いはずなのに…
今は、暖かくて溶けてしまいそう……。
幸せすぎて頬に涙が伝うと、和くんは親指で拭って、
和「また…唯は泣き虫だな…(笑)」
ふふっ、って笑う和くんの白い息を見て、私も釣られて笑った。
和「そろそろ寒いし、帰ろっか。」
唯「うんっ」
車を走らせる和くんを見ながら、
どれだけ辛くても、苦しくても、
和くんが側にいてくれる。
私は世界一の幸せ者だ、って心からそう思った。