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好奇心─小さな欲望─

第1章 1時間目

「えーっと……あっ!」

少しの間、首を捻っていた和希は何か思い出すように声を上げた。

「おっ!?わかったか和希!」

前のめりで目をキラッキラと輝かせた碧斗が和希に言った。

「あーうん。…どーせ二人の事だからアレでしょ?
新しく教育実習にうちのクラスに来る女の人のこと。」

やれやれ…と言った感じで和希は首を竦める。

「そーっそーっ!さっすが和希だな!いかにもうちの情報屋だぜっ」

親指をたてて言う将太。

「将太…日本語おかしいぞ…」

「どーでもいーんだよ!
早くその女の人のこと教えろ!」

和希のやんわりとした注意にも、将太は構わず話の先を促した。

「そーだ!そーだぁ!将太はバカだからいーんだよ!早く教えろー!」

碧斗も将太に便乗して拳を高く突き上げた。

「ほら!碧斗もこーいってんだ!
…って碧斗っ。そんな大きい声だしたら周りにフシンシャいだかれる?だろ!」

……将太よ…。お前も充分大声出しといて今更それ言うか?

"フシンシャ"じゃない。
"不信感"だ。不審者いだいてどーすんだ。

あと…怒るところがきっと違う。

「はぁ……とりあえず、来るのは明日からだろ?休み時間教えてやるから、今は大人しく教室入ろ?」

和希は心の中で将太に突っ込むと、頭を押さえながら歩みを進めた。

「ん~…それもそーだなっ!楽しみは後に取り除かなきゃ!」

「将太!それは素直に取っておけ!」

真ん中を歩く将太の左側で碧斗が楽しそうに将太に言う。

右側を歩く和希は、そんな光景を何処か優しい瞳で見ていた。

将太・碧斗・和希。
この三人は何処か目立つグループで教師たちも一目おいていた。

人を惹き付ける何か…

そんなモノを小学三年生にして発揮する子はそういるもんじゃない。

将太はバカだが、碧斗も和希も将太をリーダー的存在と認めてる。

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