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赤い花~情欲の檻の中で~

第4章 MemoriesⅢ

 冗談ではない。車中で延々とお腹の子の話や家族の話題を持ち出されるかと考えただけで、ゾッとする。
 狭量なのは判っていたが、こんな心境のときに、他人の幸せな自慢話に平気な顔でつきあえるほど人間ができてはいない。
「いいえ、とんでもない。気持ちは嬉しいけど、妊婦さんに送って貰うだなんて、申し訳なさ過ぎるもの。家でお嬢さんたちも待っているでしょうし、あなたも気を付けて早く帰ってあげてちょうだい」
 慌てて言ったまさにその時、バッグの携帯が鳴った。

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