テキストサイズ

赤い花~情欲の檻の中で~

第4章 MemoriesⅢ

 美華子は唇を噛みしめると、ヒールの音を響かせてアスファルトの道を歩き始める。そんな彼女の前を、白い軽自動車がゆっくりと追い越して通り過ぎていった。
 運転席にいるのは、例の名前を忘れてしまった妊婦だ。
 美華子はやり切れない想いで溜息をつく。同じ二十八歳、夫に愛され、既に三人目の子の母となろうとしている幸せな女と、三年間もつきあった恋人に棄てられようとしている女。この違いは何なのだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ