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赤い花~情欲の檻の中で~

第4章 MemoriesⅢ

 先刻の妊婦を思い出す。特に美人でも可愛いわけでもない。もしかしたら、自惚れかもしれないが、自分の方が少しはマシかもしれない。にも拘わらず早々と結婚して、三人もの子どもに恵まれている彼女。あの女と比べて、自分のどこが劣っているというのか。
 運命の神さまはあまりにも理不尽だ。自分は別に悪いこともしてないし、ただ真面目に生きているだけなのに。祥吾は確かに多情な男だけれど、今のところ妻子持ちというわけではなく、彼との交際は不倫ではない。つまり、彼と拘わっていることで、誰かを不幸にしたり哀しませたりすることもしてない。

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