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赤い花~情欲の檻の中で~

第4章 MemoriesⅢ

 その時。バーの自動ドアが音もなく開いた。新たな客の気配に、美華子は何気なく視線をそちらに向ける。流石に、それが誰であるかを認めた時、息を呑んだ。
 辻村遥香が今、こちらに向かって大股で歩いてくる。
「辻村さん」
 美華子の唇から吐息のように落ちた名前に、祥吾がギョッとした表情で振り向いた。
「き、君」

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