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赤い花~情欲の檻の中で~

第1章 序章~砂漠にて~

 緩慢な動作で視線を上に投じると、吸い込まれそうな蒼い空が視界一杯に映った。何の鳥か、白い翼をひろげて旋回する鳥は悠々と飛び、やがて空の蒼に吸い込まれるように見えなくなる。
 消えてしまいたい。褐色の大地でも、蒼い涯(はて)のない空でも構いはしない。この身を地上から、あのひとのいるこの世から消し去ってくれるなら。
 だが、人は多分、誰でも一生、一人でい続けなければならないのではないかと、もう一人の自分が私に囁きかけているのも事実だった。どれほど愛している恋人がいようと、親しい友人がいようと、所詮人間はとどのところ孤独なのだと。

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