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それでも、私は生きてきた

第50章 もう一つの別れ

叔父は、肺癌を患って以来、
ピタッと煙草を辞めた。

当時、まだ未成年だった私は
既に煙草を覚え、まだ
辞めれていない。


煙草、吸っていいぞ。


しばらく開かれていない車の灰皿を
ガシャガシャっと、
開ける叔父。



祖母宅では、灰皿を玄関先に置き、
コソコソと吸ってた。



んー…ごめんね。吸っちゃうけど。


いいんだいいんだ!淳也も吸ってっと。



笑って手をヒラヒラ左右に動かす叔父は、
なんだか
とても
安心感を感じる。


私が実家を離れてから、
3年後。


大震災が起きていた。


テレビで見る、
地元付近の光景は、
なんとも恐ろしかった。


震災から1年後。
その光景は、まだまだ
残骸が残っていた。


叔父の穏やかな運転に揺られながら、
震災の跡地を
見続けた。


津波は、ココまできてた。あの跡が津波の…。
ココにでっかい店あったの覚えてっか?
津波で流れて残った瓦礫がコレ。
この辺りは、復旧した。
ココのトンネルに、車が何台も挟まってた。
あそこ、斜めになってんの、わかっか?





叔父の震災案内は、
当時の過酷さが
ヒシヒシと伝わってくる。


震災直後の台風があったことも、教わった。

震災の影響もあって、
台風に負ける家が多かった。
電車も動かない。電話は繋がらない。
車も流されて…。避難する為に、
皆で歩いた。




ぐぅーっと、心臓が上がって来る感じがした。

涙がこみ上げ、
心臓が押しつぶされてしまいそうな
苦しみと悲しさが
めちゃくちゃになった。





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