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それでも、私は生きてきた

第50章 もう一つの別れ

昼時に戻り、昼食を終えて、
祖母と昔のようにチラシをパラパラめくりながら
ゆっくりと会話を弾ませた。

お花が大好きな祖母。

高校になってから毎年、
5月の祖母の誕生日は花束を。

祖母宅から歩いてすぐ近くに、
古くから花屋がある。

高校の頃は、
おばちゃんが花束を作ってくれて
腰の曲がったおばぁちゃんが、
レジ横に座っていた。


この花屋に来るのも何年ぶりか…

引き戸を開けると、
おばちゃんもおばぁちゃんも
居なかった。

30代半ばくらいのお兄さん。

お店の雰囲気は変わらない。

祖母に花束をプレゼントしたいので…
と、お願いをしつつ、
狭い店内を見回した。

おばちゃんもおばぁちゃんも…いない。


あの…数年振りに来たのですが、
おばちゃんとおばぁちゃんは…今は…?


あ、里帰りか何かですか?おばちゃんは、うちのおふくろなんで僕が交代しまして。ばぁちゃんもまだ元気に生きてますよー!



たったの数年で
こんなにも変化してしまう地元の光景に
なんだか切なさと悲しみに浸っていた。
でも、

おばちゃんもおばぁちゃんも
元気。と聞いて
ホッとする…。


お兄さんにお任せで作ってもらった花束には、
淡いピンクの薔薇が中心に居る。

初めてココで、祖母の誕生日の花束をお願いした時も
おばちゃん…このピンクの薔薇を添えてくれていたんですよ!

おふくろもですか?いやーやっぱ親子なんっすね〜


照れ臭そうに笑ったお兄さんに、
また帰って来て下さいね。
と笑顔で見送られた。




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