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それでも、私は生きてきた

第69章 動く姿

ベットの脇のカーテンが開き、モニターが現れた。

じゃあ、赤ちゃんと会いましょう。お母さん。


先生の一声にまた涙が溢れた。


モニターに映し出された姿は、
小さな小さなまぁるい形だった。

暗い中に白く浮かび上がる姿。

白い形の中、中心部が小刻みに動いている…。

手足の形がうっすら浮かび上がっている。



モニターの中に映し出された姿が、
私の中に生きている。



ココが赤ちゃんの頭ね。動いてるのが心臓。
手と足。赤ちゃんがお腹の中で丸まってる格好ね。


先生の一つ一つ丁寧な説明を聞きながらモニターから目を離せなかった。



お腹の中で元気な赤ちゃんだよ、お母さん。


はい…


と、返事をした時。


モニターに映る赤ちゃんが手足をバタバタ動かした。



あっ…

目を見開いて涙がドクドク流れた。


お母さん!赤ちゃん動いてるよ!ほら!ほら!手足を動かしてるよ。お母さん、しっかり見てて。なかなかタイミング良く見れないんだから!


嬉しそうに先生がモニターを見つめながら声をかけてくれた。

私の中で
必死に生きてる命…。
私が「お母さん」なのに。

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