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好きな人がいた

第8章 社会人二年目

数ヵ月前、彼が街を歩いている姿を見た。
彼女らしい女性と一緒に手を繋いで歩いている姿をだ。
実に数年ぶりに彼のtwitterを見た。彼女とののろけ話やデートの写真を見て、地元で社会人になったことを知った。
ああ、同じ街にいるんだと思った。
同じ街で生活している。私が認識していないときも見られているかもしれない。どこかで鉢合わせるかもしれない。
こんな、こんな醜くて底辺で彼氏もできず、先輩に見下されながら働いて、疲れきって歩いている私と
彼女をつくってそれなりに名のとおった企業で働いて、笑顔で歩いている彼が
どこかで顔をあわせるかもしれない?
嫌だ。
あんなに会いたかったのに、あんなに謝りたくて話したくて許されたかったのに。
彼に釣り合う私はどんどん肥大する。
彼に認められる私はどんどん立派になる。
私じゃないみたいだ。
こんなの私じゃない。私はもっと普通の、彼に笑顔で「久しぶり、あのときはごめんね」って言える大人になりたかったのに。

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