貧乳ヒメと書かない作家
第29章 FURUSATO
そこはなんとも閑散とした場所だった。
「ここどこ」
「駅です!」
桐生は至極もっともなことを言った。
箱根湯本駅から電車をいくつか乗り継いできたとある郊外の田舎町。
駅にはただ改札口と屋根がありできる限り無駄を省いたような作りだった。
少し都会から離れただけというのに辺りは田んぼが広がっており、年末に帰郷してきたかのような錯覚に陥りそうになる千春だった。
「どうしてここへ?」
趣旨をまったく知らされてない千春は不安げに言った。
「なんかおかしなこと考えてないでしょうね?」
千春が睨みをきかせる。
「まぁ黙ってついてきなって」
桐生は思いの外、真顔でそれを受け流した。