
貧乳ヒメと書かない作家
第34章 無題
千春が正式に桐生の担当になってから、半年が過ぎようとしていた。
今も平屋の桐生の自宅にて、執筆活動は続けられている。
広い庭が見渡せる和室で、小さな机にかじりつくようにして、桐生はペンを走らせた。
縁側から春の陽気が照り付ける。
「よし…」
一枚書き終えると、それを待っていたかのように私はそれをとった。
「なんだ。千春、本社に行ってたのかと思った」
「うん、そうなんだけど、途中読み返してたらなんか変なとこあって」
私は数カ所の筋書きのミスを訂正する。
「姉だった人が妹になってちゃわけんかんないよ。
全く…」
「んー。書いてるとサブの登場人物とか設定忘れちゃうんだよね」
