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貧乳ヒメと書かない作家

第15章 比較と乖離2

「如月先生…?」

え??

なんでここに如月先生?
それにお風呂上がりみたいだし。



異様な空気が流れる。



「…とりあえずスカート穿けな?」

沈黙を破るように桐生が言った。

「ぁ、うん」千春はスカートを持ち上げた。

「千春ちゃんじゃない。いらっしゃい」

如月は、前あった時と同じ笑顔で微笑んだ。

いらっしゃいって…?

「え?」

「千春、違う!誤解だよ!」


2人何してたの?



千春はわけがわからずただ立ち尽くす。

「千春!あのな!俺はその、別に…」


なんだこの感じ。
手足がビリビリする。目眩もしてきた。


「あ、あたしっ帰ります!お邪魔しました!」

声が不自然に波打っている。
なんだ、なんだ、この感じ。

千春は駆けて部屋を出た。

「おい!……!」

後ろから追いかける桐生が何か叫んでいたが、耳に入らなかった。


ただ混乱して気が動転して、貧血みたいにクラクラして…。

足がもつれ、転びそうになるが、ただひたすらに階段を駆け下りた。階段には自分の足音が響いているはずなのに、今の千春には何も聞こえなかった。


なんで

なんで

なんなの?


嗚咽がする。きっと急に走ったせいだ。


千春は自分でも知らずに頬に一筋の涙を流していた。





「千春!!!」

そう叫んだ桐生の声が届くはずはなかった。





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