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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第1章 美香の話①

アタシは美香20歳。

今はデリヘル嬢をやっている。

アタシの中にはアタシ以外に5人の人が棲んでいるらしぃ。

らしぃというのは、アタシ自身はその人たち(ホントに人って言えるの?)に会ったことがないからだ。

じゃぁ何故アタシにそんなことが分かっているかというと、18歳になった春の終わりの頃に突然『ギルティ』が現れてそれを教えてくれたからだ。

『ギルティ』は言った。いや、言ったというのとは少し違うかもしれない。
それは声ではなくて、低く重く感じる響きで体に伝わってきた。

アタシたちは1つの体に全員で6人いるのだと。
ただ、お互いにそれぞれの人格の時以外には意識がない。だからお互いに起こっていることの記憶がない。

これはとても危険なことだった。

両親は実の娘を気持ち悪がり、周囲の目ばかり気にして今すぐにアタシを施設に入れようとしていた。

病院や施設なんて信じられない。

病院では今だって、珍しいモルモットのごとく扱われ、薬ばかりを飲ませようとする。あの薬たちは本当にひどい。体のすべての力を奪い去ろうとして自分では何も考えられなくなる。

医者は言った。このままでは普通の日常生活は無理だと。だから施設に入らなければいけない。ただ、もし、ずっと誰かがアタシを監視することができれば施設に入らずに治療を続けていくこともできると。両親は24時間の監視は不可能だと言い、施設に入れようとした。

だから『ギルティ』が現れたのだ。
『ギルティ』は皆の監視役になった。

お互いでお互いの存在を守るために『ギルティ』が監視する。その時その時に必要な人を呼び出す。

そして『ギルティ』はルールも作った。
自分の身に危険が及ぶと予想されることをしようとすると意識の奥に沈ます。そしてしばらくは出て来れなくする。
それは犯罪行為だったり、タトゥや自傷行為も危険行為とみなされるのだと。

『ギルティ』が現れてアタシは落ち着きはじめ理由は分からないが、症状は回復していると医者も周囲も思った。

その日からアタシはこの田舎の家を出ることだけを考えた。『ギルティ』がいれば大丈夫だと思えた。

『ギルティ』・・・・・

有罪。

『ギルティ』が有罪なのか。
アタシが有罪なのか。
アタシたちの存在こそが有罪なのか。






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