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~多重人格パートタイムラヴァー・ガール~

第6章 解離①

アタシはその日から1か月くらいは、ほとんど毎日のように病院に通わされた。

カウンセリングという名の医者との面談。

そして1か月を過ぎた頃に医者が

アタシは解離だと言った。

正しくは解離性同一性障害。
かつては多重人格性障害と言われていたがこちらの方が分かりやすいか?と医者は言った。

アタシが時々、何故こんな所にいるのか知らない場所にいたり、知らない物が鞄に入ってたりするのは、その時に他の人格になっているからだと言った。


最近妙に笑顔を向けてくるこの医者が、アタシはやはり好きにはなれなかった。

ここに来るといつもより頻繁に記憶が飛ぶのも、きっとこいつのせいだろうと思っていたからでもあった。

医者は色々なテストやカウンセリング。また催眠療法などの結果、アタシの中には数人の人格がいるのだと言った。

いきなりそんなことを言われても簡単に理解できないアタシに、医者は続けてこんな風に言った。

まだ、その全員を把握はできてはいないのだけど、問題なのはその人数ではない。
解離を起こすことによって日常生活に支障があるかどうかだと。

日常生活に支障?
アタシには今支障があるのか?
それは誰が判断するんだろうか?
いや、そんなことよりアタシは自分が多重人格などだなんて言われてこれからどうすればいいのか混乱していた。

そんなアタシに医者は、治療に向けて明るい材料は、理解力があって治療可能な人格が存在していることだと言った。

しかし同時に邪魔をする人格も存在しているらしい。ただその人格は暴力的ではあるが破壊的でもなく、そして自傷行為を抑える人格も存在しているのだと言った。

アタシはまるで他人事のようにしか聞こえなかった。

理解力がある?暴力的?
いったい誰のことを言っているのか。

アタシはアタシでないのか?


「これから焦らず時間をかけてみんなを一つにしていくんだよ」

いつもながら昆虫のような顔をした医者が今までで一番嘘っぽい満面の笑顔でそう言った。

アタシはまだ自分に起こってるいることがよく分からなかった。




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