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会議室から恋。

第22章 10 坂下健人

そう言って舌を出す仕草をみて、理性が働く人、いるなら教えてくれ。

オレには無理だ。

右手から荷物を落とし、杉山さんを抱き締める。

「…大丈夫?」

ぶつかった肩を撫でる。

「うん。大丈夫」

オレの手を払いのける。

恥ずかしいのかもしれないけど、これはちょっと効くな。

キツい。

拒否られてるみたいで。

オレの腕から抜け出した杉山さんは、オレが落とした荷物を拾い、またオレに渡す。

「ごめん。ありがと」

「ううん。あたしこそ、ごめんね。気を付けて歩く」

苦笑い。

なぁ、オレ嫌なんだってその顔。

すごい罪悪感を感じるんだ。

オレがそんな顔させてしまってるんだよな。

ずっと笑っててほしいのに。

何か、気のきくようなことが言えたらいいのに。

つくづく、気のきかない男。

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