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飴と鞭の使い方

第1章 運の尽き

一日に三回も違う場所で見かけるやつがいる。
俺が出社するときと、昼の休憩のとき、それから退社するとき。
別に変なところはない。そして興味もない。ただ「ずっと働きっぱなしだな。いつ寝てんだ?」と思っただけで。

その後の観察はただの気まぐれだった。朝は新聞配達、昼は俺の会社の向かいビルの清掃員、夜は居酒屋で働いているということが分かっただけ。そして、あぁ金に困ってるんだな。一般庶民は大変だ。清々頑張れ。と俺は心の中で哀れな彼を労った。この時はそれ以上の感情は無かった。

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