
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
「あ、えっと……。お薬は、先生がいらっしゃらないと処方できないんです」
――そして例に漏れず、鳩峰先生は、不在。
恭介くんは苦笑をうかべ、額に手を当ててから溜息をついた。
「……養護教諭が不在とは、まったく。
斎宮さん一人に保健室の業務を押し付けるとは職務放棄も甚だしいところですね」
「た、たぶん、先生もお忙しいんだと思います」
保健委員長さんも恭介くんとおんなじこと言ってたっけな、なんて思い出すとなんともいえなくて、私もついつい苦笑い。
ところで。
「あの。私の名前…どうして?」
斎宮、と呼ばれたけど、私ちゃんとした自己紹介をしてなかった、よね?
「あぁ、すみません。滝がいつも貴方のことを話すものですから。
もうすっかり知り合いのつもりになってしまっていました」
そう言って恭介くんは、恥ずかしそう、というか照れ隠しのように頬をかいて笑ってくれた。
先程とは違う屈託のない笑顔。
落ち着いていて、包み込んでくれるような笑顔も素敵だったけど、こっちの笑顔もいいな、って。
肩の力が抜けた、っていうのかな。
恭介くんの素の表情が垣間見えた気がした。
それにしても…。
「滝くんが、私のことを?」
他人越しに自分のことが伝わっている、というのはなんだかむず痒い感じだ。
幸い滝くんはひとのことを悪く言うような人ではないことはわかっているから、
変な心配も不安もないんだけれど…。
目立つものは何もない、ザ・平凡を地でいく庶民なこの私。
話題にできるようなところといえば「転校生」くらいしか、ない気がする。ううーん…。
