
ロイヤル&スレイヴ!
第2章 1.ここが土鈴学園
追いついた恭介が叫んだときには、すでに俺の身体は窓をするりと潜り抜けたあとだった。
覚つくことなく枝と幹をつかみ、俺は難なく木と木を渡っていく。
きっと、恭介のやつは悔しそうに顔をしかめているに違いない。
俺は気分よく両足で軽く枝を蹴って、地面へと華麗に飛び降りる体制となった。
しかし、盲点。
俺の視点は着地する地面までは確認していなかった。
例えばそこに障害物はないか、とか。
例えばそこに誰かいないか、とか。
そして、誰かがいた場合。
しかもその誰かが女子生徒だった場合。
飛び降りたわずかな滞空時間の中、まずいと思ったが、まさに時すでに遅し?
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いつまでも、正門に威圧されっぱなしでいるわけにもいかないので、私はなんとか土鈴学園に一歩前進していた。
とはいえ、広大な敷地を誇る土鈴学園。
職員室のある本館を探すのにも一苦労だった。
本館と呼ばれるのだから、真っ先に目のつくところにあるはずなのだけれど。
筋金入りの方向音痴の私。
例に漏れず方向音痴っぷりを発揮した私はすっかり正門とは離れに離れきったところまできてしまっていた。
始業一時間前のせいか、学園内に人の気配は少ない。
等間隔に立ち並ぶ木々と何気なく配置された花壇の花が、おしゃれな街の一角といった雰囲気をもっている。
歩く者の気分を楽しませてくれる雰囲気も手伝って、私はすっかり気の赴くまま歩いてきてしまっていた。
けれど、いい加減誰かに連絡しなきゃ。
15分ほど歩いても、目的地を見つけられないならこれは間違いなく迷子だ。
前もって教えられていた連絡先(たぶん、担任の先生?)に電話してみようかな、なんて考えていた矢先のこと、だった。
自分の頭上から声が聞こえてきたのは。
「うわあああああああ、どいてどいてぇぇ!」
親方、空から男の子が!
なんて、昔見たアニメ映画を彷彿とさせるこの状況を暢気に楽しむ余裕はなく。
声の方向を見上げたとたん、私は空から降ってきた男の子とごちーんと衝突。
ごめんなさい、体育の成績は3以上をとったことがありません。
